2010年02月09日
お化けなんていないんだッ!お化けなんて嘘だッ!
余談
そういや、某マンガでカッコイイことが書いてあった。
人はよく分からないものに名前をつけることで、恐怖に打ち勝ってきたとか・・・そんな感じ
例えば、夜にどこからともなく聞こえる不気味な口笛
得体の知れないその不気味さに昔の人々は
妖怪、鵺の鳴き声と考えたそうです。
現代ではその正体はトラツグミ Zoothera daumaの鳴き声だったというのが定説ですけど・・・
お化けとか、妖怪とか、非科学的ですが、
天井のシミがなぜできるとか、それをする輩がいるのか、そいつにはどんな名前をつけてやろうか・・・
とか考えるのもメルヘンで、ええなぁ~と思うんですよ。
だから、コードがぐちゃぐちゃになるのも、部屋に突然陰毛がでてくるのも
そういうことする妖怪がいるんですよ・・・たぶん
なんか、話が逸れた上に、Q.E.D.とでろでろが混ざってしまった・・・
実在するかどうかわからないのも恐いが、
実在するのに名前がついていないのをどうにかするのが、分類学の1つ。
この干潟のお化けさんがお名前を持っているかどうかを
私のお師匠様がお忙しいなか、
このスナモグリ(以下;スナモグリA)の種同定をやっていただきました!!
私は無力でした・・・


スナモグリA 側面 Callianassidae sp. lateral view
左:雄、右:雌
今回、取り上げるだろう体の部位を書いてみました。
見づらいですが、参考にしてください。
ちなみに、
雌の体の色が赤っぽいのは、卵巣の色が透けて見えているからであります。

頭胸甲・背面 carapace dorsal view
頭胸甲を背面から見ると、ぼんやり卵が見えないだろうか?
Sakai (2005) の検索表にならうと・・・
背面から見た卵形の甲皮の有無
スナモグリAは有る!!
・第6腹節の側面の突起の有無
・額角が鋭角かつ隆起の有無
という項目もあるんだが・・・
スナモグリAはたぶん無いはず!!


第1腹肢、第2腹肢 1st pleopod, 2nd pleopod lateral view
左:雄, 右:雌
スナモグリは雌雄で第1腹肢と第2腹肢の形態が違うわけですね~
☆選択肢☆
① 雄に第2腹肢が無い、もしくは、足状のもの有る。
② 雄に葉状の第2腹肢が有る。
スナモグリAの雄には第2腹肢が無いので・・・
①でしょう!!
・・・っていうか、スナモグリAの雄と雌が同種である証拠などないんだけどね!!
Sakai (2005) の検索表から・・・
スナモグリAがスナモグリ亜科 Callianassinae
に属することが分かりました。
参考文献:Sakai, K. 2005. Callianassoidea of the world (Decapoda, Thalassinidea). Crustaceana Monographs 4: 1-285.
Sakai (2005) に習うと、スナモグリ亜科はCallianassa属だけとなるんです。
Callianassa属はいろんな属が出来たりくっついたりを繰り返したいるので・・・
ここでは、なるべく近縁種を絞り込むために(変な日本語)
ここからは参考文献を変更します!!
Lin et al. (2007) で、日本の温帯域に棲息するスナモグリ Nihonotrypaea petalura, ニホンスナモグリ N. japonica, ハルマンスナモグリ N. harmandiが属するNihonotrypaea属の共通の特徴が挙げられている。
Nihonotrypaea属の共通の特徴
・額角が幅広い三角形、尖らない
・角膜の位置が背面、末端近くにあり、円盤形である。
・第3顎脚に外肢が無い
・第3顎脚の坐節 ischium と長節 merus が蓋形
・第3顎脚の長節 merus の腹側突出部が腕節 carpus との節を超える
・第3顎脚の指節 dactyl と前節 propodus が指状で、細長い
・ハサミ脚が左右非対称、大きい方のハサミ脚の長節 merus に腹側に突起がある
・第1腹肢が細く、分岐しない(雌雄ともに)
・第2腹肢が雄には無く、雌には2分岐したものがある
・第3~5腹肢の内肢の内縁に太く短い付属肢がある
・・・

額角・角膜 rostrum and cornea dorsal view
・額角が幅広い三角形、尖らない
・角膜の位置が眼柄の背面、末端近くにあり、円盤形
・・・たぶん、合ってるんじゃないかな?

第3顎脚 3rd maxilliped inner view
・第3顎脚に外肢が無い
・第3顎脚の坐節 ischium と長節 merus が蓋形(幅広い)
・第3顎脚の長節 merus の腹側突出部が腕節 carpus との節を超える
・第3顎脚の指節 dactyl と前節 propodus が指状で、細長い
赤文字は確実に一致している!!自信がある!!・・・たぶん
とにかく、第3顎脚が幅広いのが特徴なのですよ。

雄 ハサミ脚 male cheliped
・ハサミ脚が左右非対称、大きい方のハサミ脚の長節 merus に腹側に突起がある
これも自信ある!!突起がある!!
ちなみに、
スナモグリ N. petaluraはハサミ脚の縁に顆粒が全く無いんだそうです。
スナモグリAには鋸状の顆粒が目立ちます・・・何者?


第1腹肢、第2腹肢 1st pleopod, 2nd pleopod lateral view
左:雄, 右:雌

雄 第1腹肢 male 1st pleopod lateral view
・第1腹肢が細く、分岐しない(雌雄ともに)
・第2腹肢が雄には無く、雌には2分岐したものがある
これは前述した通りだ!!あってるんじゃあないのか?!

第3腹肢 3rd pleopod posterior view
・第3~5腹肢の内肢の内縁に太く短い付属肢がある
写真は第3腹肢だけですが・・・
とりあえず第4、5腹肢にも付属肢を確認しました!!
合ってると思う!!
それなりに整合性があるんだし・・・
さて、種同定と行きたいところですが・・・
尾節の形状が種同定の鍵になることがあります。
・・・というわけで、掲載してみましたが
ニホンスナモグリ N. japonicaの尾節の後端が凹まず、真っ直ぐだそうです。
一方、スナモグリ N. petaluraの尾節の後端が凹んで、
写真のスナモグリAの形状に近いそうです。
しかし、
ハサミ脚の形状でスナモグリ N. petaluraとは異なる。
あとは、第1触角と第2触角の柄部も見なければならないんだが・・・
素人にはまだ理解できない・・・
参考文献:Lin, F. J., T. Komai and T. Y. Chan. 2007. A new species of a callianassid shrimp (Crustacea: Decapoda: Thalassinidea) from deep-water hydrothermal vents off Taiwan. Proc. Biol. Soc. Wash. 120: 143-158.
・・・というわけで、お化けは軽くお化けのまま終わることとなりました。
お見苦しい記事かと思われますが・・・
ここまでお付き合いいただいた奇特な方ありがとうございます。
意味不明と思われた点があれば、教えてください。
出来る限り随時更新いたします。
ではでは
どぴゅう~
そういや、某マンガでカッコイイことが書いてあった。
人はよく分からないものに名前をつけることで、恐怖に打ち勝ってきたとか・・・そんな感じ
例えば、夜にどこからともなく聞こえる不気味な口笛
得体の知れないその不気味さに昔の人々は
妖怪、鵺の鳴き声と考えたそうです。
現代ではその正体はトラツグミ Zoothera daumaの鳴き声だったというのが定説ですけど・・・
お化けとか、妖怪とか、非科学的ですが、
天井のシミがなぜできるとか、それをする輩がいるのか、そいつにはどんな名前をつけてやろうか・・・
とか考えるのもメルヘンで、ええなぁ~と思うんですよ。
だから、コードがぐちゃぐちゃになるのも、部屋に突然陰毛がでてくるのも
そういうことする妖怪がいるんですよ・・・たぶん
なんか、話が逸れた上に、Q.E.D.とでろでろが混ざってしまった・・・
実在するかどうかわからないのも恐いが、
実在するのに名前がついていないのをどうにかするのが、分類学の1つ。
この干潟のお化けさんがお名前を持っているかどうかを
私のお師匠様がお忙しいなか、
このスナモグリ(以下;スナモグリA)の種同定をやっていただきました!!
私は無力でした・・・


スナモグリA 側面 Callianassidae sp. lateral view
左:雄、右:雌
今回、取り上げるだろう体の部位を書いてみました。
見づらいですが、参考にしてください。
ちなみに、
雌の体の色が赤っぽいのは、卵巣の色が透けて見えているからであります。

頭胸甲・背面 carapace dorsal view
頭胸甲を背面から見ると、ぼんやり卵が見えないだろうか?
Sakai (2005) の検索表にならうと・・・
背面から見た卵形の甲皮の有無
スナモグリAは有る!!
・第6腹節の側面の突起の有無
・額角が鋭角かつ隆起の有無
という項目もあるんだが・・・
スナモグリAはたぶん無いはず!!


第1腹肢、第2腹肢 1st pleopod, 2nd pleopod lateral view
左:雄, 右:雌
スナモグリは雌雄で第1腹肢と第2腹肢の形態が違うわけですね~
☆選択肢☆
① 雄に第2腹肢が無い、もしくは、足状のもの有る。
② 雄に葉状の第2腹肢が有る。
スナモグリAの雄には第2腹肢が無いので・・・
①でしょう!!
・・・っていうか、スナモグリAの雄と雌が同種である証拠などないんだけどね!!
Sakai (2005) の検索表から・・・
スナモグリAがスナモグリ亜科 Callianassinae
に属することが分かりました。
参考文献:Sakai, K. 2005. Callianassoidea of the world (Decapoda, Thalassinidea). Crustaceana Monographs 4: 1-285.
Sakai (2005) に習うと、スナモグリ亜科はCallianassa属だけとなるんです。
Callianassa属はいろんな属が出来たりくっついたりを繰り返したいるので・・・
ここでは、なるべく近縁種を絞り込むために(変な日本語)
ここからは参考文献を変更します!!
Lin et al. (2007) で、日本の温帯域に棲息するスナモグリ Nihonotrypaea petalura, ニホンスナモグリ N. japonica, ハルマンスナモグリ N. harmandiが属するNihonotrypaea属の共通の特徴が挙げられている。
Nihonotrypaea属の共通の特徴
・額角が幅広い三角形、尖らない
・角膜の位置が背面、末端近くにあり、円盤形である。
・第3顎脚に外肢が無い
・第3顎脚の坐節 ischium と長節 merus が蓋形
・第3顎脚の長節 merus の腹側突出部が腕節 carpus との節を超える
・第3顎脚の指節 dactyl と前節 propodus が指状で、細長い
・ハサミ脚が左右非対称、大きい方のハサミ脚の長節 merus に腹側に突起がある
・第1腹肢が細く、分岐しない(雌雄ともに)
・第2腹肢が雄には無く、雌には2分岐したものがある
・第3~5腹肢の内肢の内縁に太く短い付属肢がある
・・・

額角・角膜 rostrum and cornea dorsal view
・額角が幅広い三角形、尖らない
・角膜の位置が眼柄の背面、末端近くにあり、円盤形
・・・たぶん、合ってるんじゃないかな?

第3顎脚 3rd maxilliped inner view
・第3顎脚に外肢が無い
・第3顎脚の坐節 ischium と長節 merus が蓋形(幅広い)
・第3顎脚の長節 merus の腹側突出部が腕節 carpus との節を超える
・第3顎脚の指節 dactyl と前節 propodus が指状で、細長い
赤文字は確実に一致している!!自信がある!!・・・たぶん
とにかく、第3顎脚が幅広いのが特徴なのですよ。

雄 ハサミ脚 male cheliped
・ハサミ脚が左右非対称、大きい方のハサミ脚の長節 merus に腹側に突起がある
これも自信ある!!突起がある!!
ちなみに、
スナモグリ N. petaluraはハサミ脚の縁に顆粒が全く無いんだそうです。
スナモグリAには鋸状の顆粒が目立ちます・・・何者?


第1腹肢、第2腹肢 1st pleopod, 2nd pleopod lateral view
左:雄, 右:雌

雄 第1腹肢 male 1st pleopod lateral view
・第1腹肢が細く、分岐しない(雌雄ともに)
・第2腹肢が雄には無く、雌には2分岐したものがある
これは前述した通りだ!!あってるんじゃあないのか?!

第3腹肢 3rd pleopod posterior view
・第3~5腹肢の内肢の内縁に太く短い付属肢がある
写真は第3腹肢だけですが・・・
とりあえず第4、5腹肢にも付属肢を確認しました!!
合ってると思う!!
それなりに整合性があるんだし・・・
さて、種同定と行きたいところですが・・・
尾節の形状が種同定の鍵になることがあります。
・・・というわけで、掲載してみましたが
ニホンスナモグリ N. japonicaの尾節の後端が凹まず、真っ直ぐだそうです。
一方、スナモグリ N. petaluraの尾節の後端が凹んで、
写真のスナモグリAの形状に近いそうです。
しかし、
ハサミ脚の形状でスナモグリ N. petaluraとは異なる。
あとは、第1触角と第2触角の柄部も見なければならないんだが・・・
素人にはまだ理解できない・・・
とりあえず、
日本の干潟でよく見られる
Nihonotrypaea属の一種ではあると思います!!
日本の干潟でよく見られる
Nihonotrypaea属の一種ではあると思います!!
参考文献:Lin, F. J., T. Komai and T. Y. Chan. 2007. A new species of a callianassid shrimp (Crustacea: Decapoda: Thalassinidea) from deep-water hydrothermal vents off Taiwan. Proc. Biol. Soc. Wash. 120: 143-158.
・・・というわけで、お化けは軽くお化けのまま終わることとなりました。
お見苦しい記事かと思われますが・・・
ここまでお付き合いいただいた奇特な方ありがとうございます。
意味不明と思われた点があれば、教えてください。
出来る限り随時更新いたします。
ではでは
どぴゅう~
Posted by 植物班 at 23:09│Comments(4)
│一応自然科学??
この記事へのコメント
おぉ、何か目茶苦茶学術っぽい。
いつの間にや妙な技術を会得してますなぁ。
ちなみに学術的ではない自分は最初の写真見たとき、
槍で妖怪を倒す某漫画のラスボスを思い出しました。
いつの間にや妙な技術を会得してますなぁ。
ちなみに学術的ではない自分は最初の写真見たとき、
槍で妖怪を倒す某漫画のラスボスを思い出しました。
Posted by 蜜柑☆ at 2010年02月12日 20:50
4cd「結局、同定できていないですけどね・・・」
栗鼠栗「海の中にいるという点では、例のラスボスと同じやねぃ!!こっちは貧弱やけどね!!」
4cd「ところで技術ってなんでしょうね?」
栗鼠栗「GIFアニメのことやないかな?フフフ・・・わかりやすくするための工夫の1つやね~」
4cd「・・・わかりづらかった重くて邪魔なだけなんですけどね。」
栗鼠栗「海の中にいるという点では、例のラスボスと同じやねぃ!!こっちは貧弱やけどね!!」
4cd「ところで技術ってなんでしょうね?」
栗鼠栗「GIFアニメのことやないかな?フフフ・・・わかりやすくするための工夫の1つやね~」
4cd「・・・わかりづらかった重くて邪魔なだけなんですけどね。」
Posted by 4cd at 2010年02月12日 21:53
お疲れ様です。すばらしいです。
GIFいいですね。私ももっといろいろ勉強します。
同定・・・
調べれば調べるほどSmilaxとHeterosmilaxの種同定が、が、が・・・(TAT)
「・・・もう、ゴールしてもいいよね・・・」
ってなります。
GIFいいですね。私ももっといろいろ勉強します。
同定・・・
調べれば調べるほどSmilaxとHeterosmilaxの種同定が、が、が・・・(TAT)
「・・・もう、ゴールしてもいいよね・・・」
ってなります。
Posted by Han-Zo at 2010年02月15日 10:59
ひといきついたぜふぅー。
甲殻の分類も難しそうですねー。
でも分類型質がつらつらと挙げられるのは
他のジャンルの分類やってる人に言わせればシアワセな事かも。
刺胞はひどいです。
こんな物のどこをどうやって測んだよ!みたいな。
分かりやすく言うと、人参の太さや曲がり具合などを見て
過去の分類がなされて来たような感じです。
それこそお化けをつかむような話です。
甲殻の分類も難しそうですねー。
でも分類型質がつらつらと挙げられるのは
他のジャンルの分類やってる人に言わせればシアワセな事かも。
刺胞はひどいです。
こんな物のどこをどうやって測んだよ!みたいな。
分かりやすく言うと、人参の太さや曲がり具合などを見て
過去の分類がなされて来たような感じです。
それこそお化けをつかむような話です。
Posted by らびりんす at 2010年02月17日 19:59