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2010年04月04日

お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜

どうもご無沙汰しておりました…栗鼠栗です。
お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
以前の記事
スナモグリの同定を見苦しくも書いてみたのですが…
単一種だけであんなこと書いてもわかりづらい!!
…というわけで、
別の種と比較してみよう!!

☆干潟の生物☆
お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
スナモグリ(黒目) Lepidophthalmus tridentatus

スナモグリAが波打ち際の砂浜にいるのに対し、
スナモグリ(黒目)(以下:”黒目”)は河口の泥や砂の中、
淡水の影響がありそうな場所で見られました。

属の同定はSakai (2005) にならい、種同定は沖縄島からの過去の報告や、Dworschak (2007) の記載…
というのを、ほとんど師匠がやっていただいたおかげで種同定ができているわけですが…

私の第一印象
以前紹介したスナモグリAに比べて
・眼のあたりが病んでいる(黒い)
・お腹のあたり(第1腹節、第2腹節)がすごくぶよぶよしている
・はさみが太い、挟まれるとちょっと痛い
・総じて気持ち悪い感じ


自然下で見るとなんとなく雰囲気が違う気がするんですが…
実際はどうなのか?
以下、様々な形態を比較してみました。

お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
左:スナモグリA 右:”黒目”
male lateral views

お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
頭胸甲・背面
carapace dorsal views


”黒目”と呼んでいるが…
こうして見ると、目というより
『眼柄が黒く、目の自体は黒くない』感じである。
あれ?矛盾してる…

とりあえず
よくよく見ていただきたいのは額角の部分(目と目の間)
お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
スナモグリA 額角・角膜
スナモグリAの方は鈍くて写真ではわかりづらいのに対し

お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
上記の画像の使い回しですが…
”黒目”の方は、目と目の間に尖った角が出ているのが確認できます。

”黒目”カッチョイイじゃないか!!

お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
第1、2腹肢 側面 1st and 2nd pleopod lateral view


例によって、左がスナモグリA、右が”黒目”
スナモグリAは♂には第2腹肢が無く、♀には第2腹肢があるのだが…
”黒目”は♂にも第2腹肢がある!!


「うわ〜コイツ!!男のくせに髪留めつけてやんの〜!!」
「女みたいのことしてきもいんだよー」
「ちげーよ!!学校終わったら床屋さん行くんだよー!!」
…というような小学生(いや、中学生もか?)がでてきそうですが、
ちゃんと生殖孔の位置を確認すれば良いのですよ。
ただ、今回生殖孔の画像を撮ってないです…すんません

♂でも第2腹肢があることで、
”黒目”はスナモグリAとは属が異なります(Sakai, 2005)。


お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
”黒目”♂ 第2腹肢 腹側 2nd pleopod ventral view


”黒目”の第2腹肢はこうなっています。
Sakai (2005) 曰く『平べったい葉っぱのような形状』とのこと…
うむ…わからんぞ…

お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
はさみ脚 cheliped


”黒目”のはさみ脚の方が、シンプルな感じしますね〜。
でも、スナモグリのはさみ脚の形態は成長段階や損傷などによって、
種内変異が大きいそうです。
種同定に使うにはじっくり見なければならんのですよ!!
安定している形質を探し当てるんDA☆

…ということで、飛ばします


お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
尾節 telson


見づらいですね…
両種の尾節の輪郭は何か違うわけですよ。

スナモグリA:全体的に長方形、後端は凹型
”黒目”:全体的に正方形…丸い?、後端は凹んでいない


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第3顎脚 3rd maxilopod


第3顎脚の前節に注目してください。

スナモグリA:前節が細長い
”黒目”:前節が丸く幅広い

いやはや…
全然違うもんですね!!
これは目から鱗ですよ!!
見ていて良かった第3顎脚



おまけ
お化けなんていないって言い切るのも何だか寂しいな〜
”黒目” 第3〜5腹節 背面


”黒目”の第3〜5腹節の両サイドに毛の房(ポンポン)がついています。
これは属の特徴なのかな?
スナモグリAには無い特徴であります。

参考文献:Sakai, K. 2005. Callianassoidea of the world (Decapoda, Thalassinidea). Crustaceana Monographs 4: 1-285.
Dworschak, P. C. 2007. First record of Lepidophthalmus tridentatus (von Martens, 1868) (Callianassidae) from the Philippines. Annalen des Naturhistorischen Museums in Wien 108 B: 121-130.

しかし、どうにも不安定な試みだな〜…
なかなか匠の仕事には至らないか…
松谷卓様のInscrutable Battleを聴いていたら、今回の記事が恥ずかしくなる…
精進せねば…
どぴゅう〜



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この記事へのコメント
同定。乙っです!!

以前、無残に引き千切られた植物の一部で同定せねばならん状況に追いやられた恐怖を思い出しちゃいました。 ブルッ

にしても写真キレイすね。

これを思い出しました。
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20100329_scintillating_insects/
Posted by Han-Zo at 2010年04月04日 21:43
すげーフラッシュとか埋め込んである〜!
いつもに増して詳しくて良いです♪
Posted by らびりんす at 2010年04月05日 19:49
 
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